もずの独り言・はてな版ごった煮

半蔵&もず、ごった煮の独り言です。

鶴ヶ城公園(会津若松城)

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【2010年1月13日】

人間は訓練して無欲になれるか?

たぶん、無理。

無欲というのは生まれつきの人がそうなのであって、生まれつきそうで無い人がそうなろうと思ってもそれは無理だろう。

保科正之は無欲だった。

地位・名声・物品。

生身の人間には欲があるのでこれらを欲しがるのだが、正之は欲しがらなかった。

「おのれを空しくして兄者に仕える」豊臣秀長はそう言って秀吉に仕えたが、「組織人・豊臣秀長」はおのれを空しく出来ても「一個人・豊臣秀長」は金銭欲を捨てきれなかった。

豊臣家を支えた名家宰でさえこうなのだ。正之だってどこかしら欲を持っていただろうと、ちょっと意地悪く見てしまうのであるが、正之にはそういう部分がどこにも無い。本当に頭が下がる。

だいたいの人間は他人から良く思われたいと思って行動するのだが、正之はそんなことは意識せずに善を行なった。「良く思われたい」という欲では無くて、自然と善を行うのである。もうこの時点で奇跡だ。

計算した無欲さはどんなに取り繕っても「ニオイ」が残る。

が、正之の場合は生得的にというか、DNAがそうなのだからそんな胡散臭さは無い。

この「生まれつきの無欲」が家光将軍の信頼を勝ち得たもとなのだろう。

正之は質素倹約の人であったことも知られる。

質素倹約。

口で言うのは簡単だが、これがなかなかしんどいのだ。

不況でお小遣いを減らされたお父さんだって、何年も続いたら「いい加減にしろっ!」と怒りたくもなるだろう。

が、正之はそんなことでは怒らない。これが生まれつきの無欲の強さなのだ。

正之の時代、大名というのは

徒食生活者

である。消費のみが彼等の仕事なのだ。

徒食生活者は自分で生産しないから生産の大変さなんて理解しない。だから平気で無駄遣いをする。

しかし、同じ徒食生活者でも正之は無駄遣いなんかせずに質素倹約を自然に続けた。頭が下がる。

こんな人格は訓練では得られない。生まれつきそうでなければこんなふうにはならない。そんな人間が秀忠将軍の子供として生まれたことに徳川幕府の幸運があった。

保科正之が作った会津藩は、最後まで徳川家と幕府を支えた。