もずの独り言・はてな版ごった煮

半蔵&もず、ごった煮の独り言です。

松江城

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【2009年7月24日】

松江藩江戸藩邸

ここで、いい年をした大の大人が二人して盥の中を覗き込んでいた。

一人はこの邸の主である出雲松江藩主・松平直政

もう一人は伊勢桑名藩主・松平定重。

直政は松江18万石の大大名、定重も桑名11万石の大大名だ。

この二人が、盥の中で気持ちよさそうにしている魚を見つめていた。

その魚とは

白魚

だ。

寿司屋に行くと軍艦巻きになって出て来る例のアレのことで、この白魚、定重が松江藩邸に持ち込んだ。

定重が盥を見せると直政は

「白くて細くて、まるでおなごの指のようでござるな」

と言った。

綺麗な指のことを白魚の如き指というのは、この当時からだった。

定重は直政に

「出羽守どの、小皿としょうゆを用意してくれぬか」

と言った。

直政は小皿としょうゆを用意させると、定重は盥から白魚を数匹小皿に移してしょうゆをかけた。そしてそれを口に入れた。

「エエーッ!!」

直政は思わず声を出した。定重は直政の目の前で白魚を生きたまま食べたのだ。

「出羽守どの、これは踊り食いといって、白魚はこうして生きたまま食べまする」

定重はケロッとして言った。

直政は恐る恐る定重の真似をして生きたままの白魚にしょうゆをかけてそのまま口に入れた。

「んまい!」

直政は白魚が想像以上に美味だったので、これを松江でも養殖しようと考えた。

1658年、直政は宍道湖で白魚を養殖するように命じた。

そして今日、白魚は出雲を代表する魚料理の一つになった。

いえやっサンが江戸で初めて白魚を見たとき

「この魚の脳味噌は、葵の形をしておるのう」

と言った。

白魚の脳味噌は透けて見えるらしいが、顕微鏡でも使わない限り、形まではわからんよ。