【2008年5月30日】
北条氏康が関東の覇者になる上で扇谷(おうぎがやつ)・山内(やまのうち)両上杉家を倒すことは避けて通れない道だった。
北条家と扇谷・山内両上杉家の戦いは長年に渡り一進一退を繰り返していた。
「私の代で決着をつけたい」
そう強く願っていた氏康は小田原城の松原神社に上杉家討滅祈願のお詣りをした。
お詣りしてからしばらくして、小田原の浜辺に1匹の大きな亀が打ち上げられているのを発見された。
とても大きな亀で、大の大人が8人がかりで浜辺から救い出し松原神社の側の池に放った。
この亀の話を聴いた氏康は、
「大きな亀が陸にあがるのは、それは願い叶うという吉兆だ。私もその亀に会いに行く」
と、氏康は亀の放たれた池に出向いた。
亀は気持ち良さそうに池の中を泳ぎ回っていた。
これを見た氏康は家臣に「この亀と同じ大きさの鏡を買って来い」と命じた。
家臣が鏡を買って来ると氏康は
「皆の者よく見ておけ。これからこの亀を通じて天におわす軍神に上杉討滅の祈願をするぞ」
と言い、用意した鏡を亀の甲羅に括り付けた。
そして池の周りで酒宴を張った。
「亀と鏡の組み合わせは『亀鏡(きけい)』と言って縁起が良い」と氏康は上機嫌でガブガブ飲んだ。
氏康も家臣たちも♪飲んで飲んで飲みまくれーっ♪とガブガブ飲んで、酒宴が終わると氏康は家臣たちに命じて亀を小田原の海に返した。
が、亀はその後も小田原の海上をプカプカ浮いていた。
「亀が見守ってくれているうちに」
氏康は「河越の夜戦」と呼ばれる合戦で両上杉家を撃破した。
「これもあの亀のおかげだ」氏康は戦勝の酒宴の席で上機嫌だった。
家臣たちも「あの日の松原神社の池の側での酒宴のときと同じくらい、今日の酒はウマい」と戦勝を喜んだ。
浦島太郎の竜宮城は幻影だったが、北条氏康の戦勝は幻影では無く現実だ。
亀は昔っから縁起モノなのだ。