もずの独り言・はてな版ごった煮

半蔵&もず、ごった煮の独り言です。

江戸城

f:id:Hanzoandmozu:20191126071541j:plain

【2010年6月18日☆】

「大炊頭、御城再建費用を調達いたせ」

弘化元年5月10日、江戸城本丸が火災で焼失すると、家慶将軍は首席老中(総理大臣)・土井利位に本丸再建費用の調達を命じた。

調達というのは、大名にカネを出させるということだ。

幕府自身が前任の首席老中・水野忠邦を中心に天保の改革をやって財政再建をしようとしているのだ。大名だって財政はガタガタだ。

そこに、「江戸城本丸再建費用を出せ」と言われても出せるはずが無い。

加えて、大名の中からは「そうやって集めたカネの使い道が不明朗だ」と本当に本丸再建費用に充てるのかどうか疑問視する声があがった。

利位の再建費用集めは全然進まなかった。

利位もこうなることを見越していたため、「持病が悪化したので、辞職します」とさっさと老中職を辞職した。

本人はいたって健康なのだが、カネ集めに手こずっているとお取り潰しや減封等のペナルティがあるかも知れないので、利位はさっさと辞職した。後任には水野忠邦が再任された。

土井利位は大坂城代のときに大塩平八郎の乱を平定し、その功績で家慶将軍の次席老中(副総理)になった。

首席老中は水野忠邦だったが、天保の改革の中に含まれていた「上知令」が水野を罷免に追いやった。

「上知令」とは江戸・大坂・京都の周辺の土地を大名・旗本から取り上げて天領(幕府の直轄領)にしようとした政策で、この「上知令」に引っかかった紀州藩が猛反発をし、ついには水野を罷免に追い込んだ。

「上知令」は利位にも関係していた。利位は下総古河藩主なのだが、大坂周辺に領地(飛び地)を抱えていた。その都合で水野の「上知令」に反対した。

利位は水野の後任として首席老中に就任したが、新しいことは何もやっていない。天保の改革の延長線上に過ぎなかった。

首席老中であることわずか半年。利位はさっさと辞職して好きな雪の結晶の研究に没頭した。

利位は若い頃から雪の結晶に興味を持っていて、オランダ製の顕微鏡を購入して雪の結晶をスケッチした。また、老中職に就く以前に『雪華図説』『続雪華図説』の2冊の本を出版している。

2冊の本に掲載されている雪の結晶の種類、何と200種類。よほど好きだったのだろう。

「出来もしないカネ集めより、雪の結晶」

土井利位、面白い殿様だった。